「わぁ、可愛い」
目にした瞬間、疑問は一気に吹き飛んだ。
大きな木の皿にふわとろ卵のオムライス。その上に、それぞれ違う種類のソースがかかっている。そしてそれ自体がゲームの中の一場面として表現されている。
トマト味はマグマの世界、クリーム味は雪の世界。それぞれの世界観の上でキャラクターが動き回っている。
「可愛い! 可愛い! どっちも可愛い! 違う種類にして大正解ですね」
思わず同意を求めると伊東がふっと笑った。
「喜びすぎだろ」
「写真撮っていいですか?」
「ああ、もちろん」
手早く写真に収めると、いただきますと手を合わせる。
可愛くて食べるのがもったいないけれど、冷めるのはもっともったいない。
スプーンをそっと雪原に差し込み、地面を掘る。中はオレンジ色のチキンライスだ。
なるべく長くこの世界を見ていたくて、端っこから慎重に食べ進める。キャラたちが「きゃー」と声をあげて駆けまわる。
伊東の方はとくに頓着せずに、端からざくざく食べていく。
それを見るのも楽しかった。世界のすべてを食べ尽くすゲームの中のラスボスそのものだ。
やっぱり伊東は魔王として世界を破滅させる方が似合うんじゃない?
なんてことを想像していると「またなんか考えてるだろ」と指摘が入る。
「はい、伊東さん魔王みたいだなーって」
「だからなんで俺が魔王なんだよ。王子だって言ってるだろ」
「このゲーム、王子さま出てこないし。伊東さん、美味しそうに食べますね。オムライスの卵はふわとろ派? かっちり巻いてある派?」
あまりに食べっぷりがいいので聞いてみると、伊東がスプーンを止めて瞬きをした。
「いやどっち派っていうか、俺はオムライスは……」
そこで言葉を切って、気を取り直したように咳払いをした。
「そういう楓はどっち派なんだ?」
「私ですか? 味はどっちも好きだけど……家で自分で作るときは、かっちり包むかな。ケチャップで上に絵を描くのが好きなんで」
「理由がガキだな」
「いやいや、ケチャップの落書きは子供じゃなくてもやるでしょう」
話をしながら、伊東はさっさと自分の分を食べ終えた。
そして楓を待ちながらまたメニューを広げる。
「メロンクリームソーダがあるけど、デザート代わりに頼むだろ」
「はい、ぜひ!」
フードメニューを頼む際、お腹の容量的に大丈夫かがわからなかったから一旦保留にしたけれど、この分だといけそうだ。
伊東が注文してくれて、楓がちょうど食べ終わるくらいにメロンクリームソーダは運ばれてきた。
ストローにキャラクターがついていて、黄色と赤のパラソルがアイスクリームに刺さっている。
「ふわぁ、可愛い……!」
感動で胸がいっぱいだ。
伊東が笑いながら、宣言した。
「妄想タイム突入」
「あ、バカにしてますね」
「もちろん、してる」
そんなやり取りもまったく嫌な気持ちにはならないのは、もうそれが言葉通りではないと知っているからだ。
クリームソーダを前に、楓が存分に妄想して時間をかけて味わうのを、彼は一度も急かさずに、どこか楽しそうにコーヒーを飲んでいた。
目にした瞬間、疑問は一気に吹き飛んだ。
大きな木の皿にふわとろ卵のオムライス。その上に、それぞれ違う種類のソースがかかっている。そしてそれ自体がゲームの中の一場面として表現されている。
トマト味はマグマの世界、クリーム味は雪の世界。それぞれの世界観の上でキャラクターが動き回っている。
「可愛い! 可愛い! どっちも可愛い! 違う種類にして大正解ですね」
思わず同意を求めると伊東がふっと笑った。
「喜びすぎだろ」
「写真撮っていいですか?」
「ああ、もちろん」
手早く写真に収めると、いただきますと手を合わせる。
可愛くて食べるのがもったいないけれど、冷めるのはもっともったいない。
スプーンをそっと雪原に差し込み、地面を掘る。中はオレンジ色のチキンライスだ。
なるべく長くこの世界を見ていたくて、端っこから慎重に食べ進める。キャラたちが「きゃー」と声をあげて駆けまわる。
伊東の方はとくに頓着せずに、端からざくざく食べていく。
それを見るのも楽しかった。世界のすべてを食べ尽くすゲームの中のラスボスそのものだ。
やっぱり伊東は魔王として世界を破滅させる方が似合うんじゃない?
なんてことを想像していると「またなんか考えてるだろ」と指摘が入る。
「はい、伊東さん魔王みたいだなーって」
「だからなんで俺が魔王なんだよ。王子だって言ってるだろ」
「このゲーム、王子さま出てこないし。伊東さん、美味しそうに食べますね。オムライスの卵はふわとろ派? かっちり巻いてある派?」
あまりに食べっぷりがいいので聞いてみると、伊東がスプーンを止めて瞬きをした。
「いやどっち派っていうか、俺はオムライスは……」
そこで言葉を切って、気を取り直したように咳払いをした。
「そういう楓はどっち派なんだ?」
「私ですか? 味はどっちも好きだけど……家で自分で作るときは、かっちり包むかな。ケチャップで上に絵を描くのが好きなんで」
「理由がガキだな」
「いやいや、ケチャップの落書きは子供じゃなくてもやるでしょう」
話をしながら、伊東はさっさと自分の分を食べ終えた。
そして楓を待ちながらまたメニューを広げる。
「メロンクリームソーダがあるけど、デザート代わりに頼むだろ」
「はい、ぜひ!」
フードメニューを頼む際、お腹の容量的に大丈夫かがわからなかったから一旦保留にしたけれど、この分だといけそうだ。
伊東が注文してくれて、楓がちょうど食べ終わるくらいにメロンクリームソーダは運ばれてきた。
ストローにキャラクターがついていて、黄色と赤のパラソルがアイスクリームに刺さっている。
「ふわぁ、可愛い……!」
感動で胸がいっぱいだ。
伊東が笑いながら、宣言した。
「妄想タイム突入」
「あ、バカにしてますね」
「もちろん、してる」
そんなやり取りもまったく嫌な気持ちにはならないのは、もうそれが言葉通りではないと知っているからだ。
クリームソーダを前に、楓が存分に妄想して時間をかけて味わうのを、彼は一度も急かさずに、どこか楽しそうにコーヒーを飲んでいた。



