【書籍化】貧乏家族の転生幼女は待望の水魔法の使い手でした~愛する家族とともに枯れた領地を潤します!〜



 この領地では、魔法で作れるサツマイモが主食なので、パンはそこそこ高価な食べ物だ。

 パン一個で三百ダール(日本円だと千円くらい)もしくはサツマイモや着物等との物物交換でも購入できるらしい。
 お小遣いをもらえたら、是非食べにきたいな。

「レオナお嬢様、申し訳ありません。それと、お仕事を引き継いでくださってありがとうございます」
「ううん。それより、可愛がってくれて本当に今までありがとう。マリーがいてくれなかったら、私もっとずっと寂しかったと思うの」

 ここ数日、マリーはずっと、涙ながらに申し訳ないと言っていたが、わが子のように可愛がってもらったレオナからすると、感謝してもしきれない。

「アランも、手間をかけるわね」
「気にすんな。お互い頑張ろうぜ。まぁ達者でな」

 アランが慰めるように肩をたたくと、グッと顔を歪め、ポロポロと涙を流し出すマリー。

「これからは、かわいいかわいいお嬢様の髪を毎日とかすことができないと思うと、悲しくて仕方ありません」

「マリー……。ねぇマリー、私頑張る。それで、もし小麦が沢山採れるような豊かな領地になったら、一緒にパンを作ろう?」
「もちろんです! お嬢様!」

 号泣のマリーと、もらい泣きしてしまったレオナ。ふたりで抱き合いながらおいおい泣いた。


 しばらくそうしていると、泣き声を聞いたマリーのお父さんが何事かと様子を見に来てしまった。

「これはこれは。もしかしてレオナ様ですか? マリーの見送りをしてくれて、ありがとうございます。お礼と言ってはなんですが、ちょうどいま焼きあがったパンはいかがですか」

 そういって差し出されたできたてのパンを、涙をすすりながらほおばる。

「美味しい……」
「そりゃ良かった。私は魔法が使えないのでね、半年ほどかけて小麦を栽培しているんですよ。充分なお水があげられないので、魔法で育てた小麦と比べると量も少ないし、味も淡泊ですが、それでも工夫次第でこんなに美味しいパンが作れます」

「そうなんですね……!」
「もうお父さんったら、パンのことになると話が止まらないんだから」

「あはは、面目ない」
「ふふ、マリーのお父さんはパンが大好きなんですね」

 レオナは、マリーとの最後の穏やかな時間を過ごした。