宵にかくして




「正門を真っ直ぐ行った先が中等部の校舎で、奥には中等部用の寮もある。蒼唯さんは寮生なんだっけ?」

「はい、今日から入寮の予定……です」

「それなら、寮の近くに生徒専用のコンビニとスーパー、地下にも色々な施設がある。日用品や食料品は、基本学園内で揃うと思うよ」


さすが秋霜、設備がよすぎて逆にこわい……。


案内人さんにこくこくと頷きながら、広すぎる校内を見渡していて、…… ─────ふと、気づいたこと。



「(ものすごく視線を感じる気がする……主に、すれ違う女子生徒から……!)」


大体の生徒が案内人さんに見惚れるような視線を向けたあと、私の存在に気づいて驚くように二度見するのがテンプレだ。


なんで、どうして、そんな感情でいっぱいの瞳ですれ違うたびに見つめられて、思わずうつむいてしまっていたら、蒼唯さん、と名前を呼ばれる。
    


「ここが2年C組。教室の場所、なんとなく覚えられた?」

「は、はい……!ほんとうにありがとうございました」



再び頭を下げていると、なにやら教室の中から興奮した女子生徒の声が響いてきて、ひやりとする。