宵にかくして




「、よみや、さん……?」

「間違いじゃない」


きっぱりと否定した彼は、こちらにそっと手を伸ばして、私が被っていたウィッグに指をかけた。


ゆっくりとウィッグが外されると、押し込められていた髪がふわりと広がる。丁寧な仕草に気を取られていたうちに、お互いの鼻先が触れそうな至近距離に気づいて、思わず固まってしまう。
 


「こんな変装も、……ここまでして俺たちに気を遣う必要はない」

「っで、でも、宵宮さんたちのファンの方もたくさんいましたし、もし私が女だってバレたら、みなさんに……っ」

「、迷惑がかかる?」

「っ、はい」

「ばかだね、お前は」

 

ほんのすこしの呆れを含んだそれと相反するように、私の頰を包みこむ手のひらはやさしい温度をしていた。じわりと肌に伝わる熱にどうすればいいのか分からなくて、視線を迷わせることしかできない。