宵にかくして




……やっぱり、勝手なことして怒らせてしまったかな。沈黙が落ちる数秒が数分にも感じられて、いたたまれなさから視線を下に落としてしまう。



「、ごめんなさい。寮の規則も、みなさんの立場も分かっているつもりです。……わ、私がここに来たこと自体が、間違いだったのかもしれません」

 
ぽろりとこぼれ落ちた言葉は微かに震えていて、申し訳なさからさらに俯いてしまう。


宵宮さんだけじゃない、お父さんや宗英さん、色々なひとに迷惑をかけて、大事なひとに隠し事をしてまでこの場所に来ることを選んだのは、誰でもない自分自身で、……そんな自分の存在が、誰かの邪魔になってしまうのではないかという不安が、ずっと胸の奥にくすぶっていた。


すると、ふう、と小さく息を吐かれて。
思わず肩を震わせて身構えてしまう私に、影が視界を覆うように近づいてくる。



「……顔、上げて」


やわらかい声音が、張り詰めていた空気をふわりと解く。掠れた語尾にそっと視線を持ち上げれば、こちらを気遣うように目尻をゆるめる宵宮さんの瞳が重なって、どきりと心臓が高鳴った。