「ん、おれの顔に何かついてる?」
「いっ、いえ……!すみません、じっと見てしまって……、ご案内よろしくお願いします」
あわてて頭を下げながらお礼を口にすると、そんなに畏まらないで、とやわらかいテノールに制される。そのまま顔をあげた瞬間、真っ白な指先がこちらに伸ばされて、手のひらに包まれた花びらにやさしく触れた。
「蒼唯さんは、桜好き?」
「……はい。お花の中で1番すきです……!」
「だからジャンプしてたんだ?」
ふ、とからかうような笑みを向けられて、顔全体がじわりと熱をもつ。
は、恥ずかしい……ぜったいガキっぽいやつだと思われている……!
「わ、わすれてください……っ」
「ふ、冗談だよ。すごい高く飛んでてたから驚いただけ」
最後の言葉は掠れて聞こえなかったけど、聞き返すよりも前に、そろそろ行こっか、とそのひとが歩き出すので、あわてて着いていく。



