宵にかくして




演劇部、と区分けされたその棚の下にあった白い箱を開けてみると、中には男もののシャツとズボンといくつかの小道具、そして────……ショートのウィッグが入っていた。


「っ、そうだ、」


それを見た瞬間、きらりと小さな希望がひらめく。


……これで男装して寮の中に入れば、少なくとも女だと気付かれることはないはず。そうすれば最悪の事態は避けられるし、これからの登校•下校の安然は保たれるのでは……?

 
おそるおそるウィッグに手を伸ばして胸の上で掲げてみると、ひかりに透かしてきらきらと反射する。ダークブラウンのウィッグは前髪と襟足がすこし長めだけど、表情を隠せるのはかえって都合がいい。


黒髪のウィッグを外して、新しいそれをふわりと被せてみる。前髪を横に流して眉のあたりまでかくして、耳元を軽く抑えて調整する。
  


「ウィッグってすごい……」


 
仕上げに瓶底メガネを掛けて鏡を覗いてみれば、どこからどう見ても地味な男の子にしか見えない。女子用のネクタイを外して、箱の中にあった少し大きめのブレザーを羽織る、そしてスカートからズボンに着替えれば────。