宵にかくして

 



空中で舞う花びらを手のひらで包みこんで、─────そのまま着地したのと同時。



「─────……君が、蒼唯咲菜さん?」



はちみつのような甘い声はどこか上品に響いて、導かれるように顔をあげてしまう。
門に寄りかかっていた彼は、やわらかく口角を上げながらこちらに近づいてきて、……だ、誰……?!!


驚きと、今の場面を見られていたことの恥ずかしさから言葉を失う私に、初めまして、とやさしい笑みを浮かべるそのひと。



「……は、じめまして……」

「蒼唯さんを教室まで案内するように頼まれてるんだ。あれ、学園長から聞いてない?」

「……き、ききました……、ありがとうございます」


思い返してみると、以前電話でそのようなことを言われた気がする。


なんで忘れてたの、ばか……!
抜けている自分に喝を入れながら、そっと彼に視線を合わせてみる。



色素の薄い髪と琥珀色の瞳がとても綺麗な彼は、さっきまでは気づかなかったけど、ものすごく整った顔立ちをしている。



まるでどこかの貴族のような洗練された雰囲気と高い身長も相まって、見下ろされると無意識に背筋が伸びるような、……でも、このひと、どこかで見たことがある気がする。