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そして、翌日。
編入してから初めての授業……のはずが。
「では、蒼唯さん。この数式の答えは?」
先生の視線が真っすぐにこちらへ突き刺さる。それを追いかけるように教室中の視線までつられて私に集まるのを感じて、思わず背筋がぴんと伸びた。
……編入初日で、ここまで当てられるなんて予想外。
今日は、1限〜3限の授業で必ず指名された。そのどれもが応用問題で、当ててくる先生の表情は期待と微かな疑念の瞳で満ちているから、……正直、とても居心地が悪い。
今は4限目の数学の授業中で、授業時間は残り2分ほど。今日学んだことの内容の応用問題が数問並んでいる。
秋霜学園は学力もトップクラスだとは聞いていたけど、もうここまで進んでるんだ……と驚いていたら、先生が痺れを切らしたように蒼唯さん、ともう一度名前を呼ばれる。
黒板にちらりと視線を向けて、頭のなかで数式を組み替えていく。この問題は一見難解に見えるけど、余分な部分を消去すれば、すぐに規則が見えてくる。
答えを導き出して、……開きかけた口をそっと閉じた。
「、わかりません」
わざと眉をひそめて、視線をノートの端に寄せる。そんな私に先生は少し落胆したような表情を見せるので、罪悪感でいっぱいになる。
……ごめんなさい、目立たないためなんです……!



