宵にかくして



「さあ、座って。美味しい紅茶があるんだ」

「あ、それなら私が……」

「いいんだよ。わたしが淹れてあげたいんだ」



小さく微笑んだ宗英さんは、テーブルに並べられていたティーセットの前に座り、流れるような所作でポットにお湯を注ぎはじめた。


上質な銀製のポットから立ちのぼる湯気に、部屋の空気がふわりとほどける。そっと視線をその手元へ向けていれば、甘やかな香りが鼻腔をくすぐった。


熟したベリーと、甘いバニラと、ほんのりとしたお花の香り。



「……マルコ・ポーロ?」


ぽつりと呟けば、宗英さんふ、と目を細めて、にこやかに頷く。真っ白なティーカップは、琥珀色に深いルビーを映したような色で満ちていた。