:
そして、放課後。
秋霜学園の中でもひときわ重厚な佇まいを見せるそこには、"理事長室"のプレート。
深い黒を閉じ込めたような艶っぽい色の扉には、こまやかな装飾が彫り込まれていて、扉というよりも"門"という言葉のほうが似合うかもしれない。
「……蒼唯です、失礼します」
ノックをした後に、ゆっくりと扉を押し開けた。
ほんのりとした木の香りが鼻をくすぐって、思わず目元をゆるめてしまう。
……本の香りがする。
辺りに視線をやれば、中央に鎮座する大きな執務机の後ろに本棚が一面に広がっていた。綺麗に整列されている古い洋書や分厚いファイルに目を奪われていれば、蒼唯さん、と名前を呼ばれて、肩がびくりと震えた。
……ああ、変わってないなあ。
深みのある重低音なのに、どこかやさしさの滲み出た声音に、ゆっくりと目を伏せる。



