……心当たりがないわけでは、ないけど……。
今の私には、どうか"そう"でありませんようにと、願うことしかできない。
上目がちに捉えてくるヘーゼルの瞳は、私に対する疑念と警戒にあふれていて、……思わず顔をそらしたくなる気持ちをぐっと抑えて、口角を持ちあげる。
「大丈夫です、会長さんとはほんとうに何もないです!」
胸を張って言い切ったのに、気に食わなそうな秋月くんの表情は変わらない。
……なんて言ったら安心してもらえるんだろう?
こんな地味なの、そこまで気に留める必要もないのに。
「秋月くんは、ほんとうにお兄さんがだいすきなんですね……」
ほぼ無意識にこぼれた一言に、秋月くんはびくりと反応する。そして、みるみる赤くなっていく頬と上擦った声に、思わず頬がゆるんでしまう。
「っ、急になんだよ。今そんな話してないでしょ」
「ふふ、そんなに照れなくても。わかります、私もお兄ちゃんだいすきです!」
「だっ、……いすきなんて言ってないから!捏造すんな!」
震えながらシャーっと威嚇する姿は子猫のようで、ちょっとかわいい……なんて微笑ましく見つめていたら、秋月くんははあ〜っと大きなため息をひとつ。



