再びトーコがエヴァの家を訪ねた日は、夕方に近い時間だった。

 ドアをノックしようとした時、家の中からオズワルドの声が聞こえたので、トーコは無意識に片手を下げた。
 エヴァと真剣に、込み入った話をしている様子だというのは、ドア越しでも何となく分かった。

(聞き耳を立てたら良くないっ……よね?)

 そう心に言い聞かせても、()()()()()()()()()()()()()、自然と耳に入ってきてしまう。

「……また、お願いしてもいーっすか、セントジョーンズワート?」

「毎年毎年、この時期に調子が悪くなるのは辛いね……。
 まあ、何度も言ってるけど、何かあれば、事情を知ってるアダムにも相談してみて。無理してまで、仕事はしなくていーからさっ」

「……ありがとうございます」

 オズワルドが外に出ると、ドアの横に居たトーコに気が付いた。

「あ……、こ、こんばんはっ!」

 低く手を挙げて、挨拶(あいさつ)をしたオズワルドと目が合った後、トーコはエヴァの家の中に入った。

「……え、えと、カモミールをくださいっ」

「了解。いつものね~」

 乾燥したカモミールの花を受け取って、ドアを開けると、オズワルドが横で背を持たれて立っていたので、トーコはすごく驚いた。

「ビッ……、ビックリしたっ」

「一緒に帰ろうと思って、待っていた」

「え、えっ!! あ、うぅ、はい……?」

 トーコは混乱と緊張と嬉しさが混ざって、体全体が硬くなってしまった。

「ほら、行くぞ」

 オズワルドが早足で歩き始めると、トーコは(あわ)てて彼のあとについて行った。