昨日の友は、今日の旦那様

 おいおい、あんたら。本気で男漁りしてたんかい⋯⋯と内心つっこみつつ、
「何言ってんの。そんなわけないでしょ」
 ドライに返しておく。
 ケンジも含め、同じ学生会館暮らしだった仲間たちで、しばらく立ち話したあと、今でも家が近いケンジと二人で家路を辿った。
「なんだか、日が短くなってきたね。まだこんなに暑いのに」
 電車を降りる頃には、もう薄暗くなっていた。
「ああ。それにしても、ブーケが飛んできてよかったな」
 ニヤニヤしながらケンジは言う。
「やかましい!」
「結婚相手になりそうなヤツ、いるの?」
 更に突っ込んでくるので、軽く肘鉄をくらわす。
「そんなに怒るなよ。もし本当に誰も居ないなら、立候補しようと思ったのに」
「ケンジ、今日はいつも以上にからかってくるね」
「からかってないよ」
 なんだか、声がかたい。
 隣を見上げると、その横顔は、耳まで真っ赤に染まっていた。