昨日の友は、今日の旦那様

「私⋯⋯女心がわからない男って嫌い!」
 それは、本音が1割、嘘が9割だった。
 女心を熟知している男はスマートで、いい気分にさせてはくれるが、日本人でそういうタイプは女たらしが大半だろう。
 私は、ケンジがそういう人ではないからこそ惹かれたのだ。
「ごめん⋯⋯俺、自信がなくて」
「自信?」
「昔から、俺にはノエミしかいないって思ってたよ。ナカジマだけじゃなく、他の仲間たちも応援してくれた。でも、肝心のノエミは、俺のことなんて全く眼中にないみたいだったから」
 ケンジの横顔が、なんだか急に幼い少年のように見える。
「ちゃんと大学に通いながら夢を追う姿が、俺には眩しかった。でも、いい雰囲気になると、いつもはぐらかすし、いきなり遠くに引っ越して、一年ほど戻らなかったこともあったじゃん」
 確かに、私は以前、高野山の宿坊で働こうと思い立ち、引っ越したことがある。