「行ってきます」



誰もいない家に、俺、片桐紫水(かたぎりしすい)はそう呟く。

分かってるけど、やめられないから。

いや、多分、信じたくないだけだと思う。

人は誰でも、自分に都合の悪いことは信じようとしない物だから。



「紫水、はよー」

「お、秋斗!今日は早いじゃん」



後ろから聞こえた声に気付けば笑顔で振り向いてる。
これも、やっぱりやめられない。



「今日はって、失礼だなー」

「昨日遅刻してきた奴が何言ってんの」



ため息をついてるのは、内海秋斗(うつみあきと)

薄い茶色の髪(本人曰く地毛)に何個か開いたピアスは一見不良に見えるが実際そんな事はない。

ま、女の子取っ替え引っ替えしてるのも事実だけど。