悲劇のセイレーンにささやかな愛を






『はい、水流園です』

『こちら、〇〇病院です。大変失礼ですが氏名をお伺いしてもよろしいですか』

『……え?』



意味がわかんなかった。

出かけた先に転びでもしたのか?
なんて訝しげに思った。

事故にあったと聞いた時は、全身が凍りついた。

家を飛び出して数分で病院まで突っ走ると、その後に伝えられた事実は酷く、つらいものだった。



『は、嘘ですよね?車に……はねられたって』

『……申し訳ありませんが、打ちどころが悪く回復の見込みは』

『嘘って言ってくださいよ……!!!』



何もかも引きちぎれそうな思いだった。

どうやら、奈月が後ろからきた車にはねられそうになったのを両親が庇おうとして。

その結果3人とも頭を打って重症。

医者の声を遮って思わず悲壮な声を上げた俺に、横にいた警察ははぁ、とため息をついた。



『どうやら奈月さんが道路に飛び出したらしいんですよ』

『は……?』

『車を運転していた者がそう訴えているらしいです。実際、この者に見覚えはありましたか?』

『……』