口パクで伝えてくる。
料理の音が大きいのと、作っている俺を気遣ってだろうか、さっきの話し方はしてこない。
「あぁ、家族がいないと必然的に料理しないといけないから。だから家事とかも全部やってるかな」
そう言うと『すごい……』と目をキラキラさせていた。
それから数分後、できたオムレツを皿に乗せ、澪にも手伝ってもらいながら運ぶ。
家で一緒にご飯を食べる人がいるの、久しぶりだ。
「いただきます」
『いただきます』
待ちきれないといった様子でオムレツを口に運んだ澪。
内心ドキドキしながら見ていると、パァッと顔を綻ばせた。
『おいしいっ』
満面の笑みで頬張る澪に、俺も思わず幸せな気持ちになる。
他の女子では決してこうなったことがないのに、どうしてなのか。
そんな事も考えようと思わないほど、俺は澪の存在を素直に受け止めていた。



