急に俺の肩を掴んで引っ張ったかと思うと、耳元でそう囁いた。
バクバクと鳴る心臓。
びびった……。
『こうやれば、紙なくても話せるんだけどね。
でも書く方が慣れてるから』
さらにそう続ける澪。
内緒話をする時のように声は発さず話せば、コミュニケーションはとれるのか。
じゃなくて。
「手帳な?じゃあ明日買いに行こう」
ニコニコして頷いた後、固まる彼女。
もし声が出てたら、「うん……え?」という感じだろう。
「澪の服とか、その他色々買いに行かない?」
すると今度こそ顔を輝かせて、コクコクと頷いた。
「それより、風呂入る?疲れてるだろうし、はやく休んだ方がいい」
『ありがとう』
使い方などを教えて風呂に行かせ、俺は夕飯の準備に取り掛かった。



