悲劇のセイレーンにささやかな愛を




「……」



また黙ってしまった。
……極度の人見知りなのか?



「っと……名前、教えてもらえない?」



そう尋ねると、彼女はぴょんと岩を飛び降りてスタスタと歩いてきた。

かと思うと、近くにあった木の枝を持ってしゃがみ。



『水流園 澪』



と砂に書くと、俺の方を見上げた。

……あぁ、言葉だと漢字が分からないから書いてくれたのか。

じゃなくて。これは一体なんて読むんだ?
いきなりの漢字クイズ。



「えーと……すいりゅうえん、みお?」



ずっと黙っていてなかなか読み方を教えてくれなさそうだったので、間違えていることを承知で口に出すと。