授業が終わると佐野くんが私の前にやって来た。
夏休みにカフェで会った時よりも髪の毛は伸びている。
「あのさ、昼休みにバスケ部の部室って来れる?」と低い声で聞かれた。
「部室は行ったことないからどこかわからないんだけど」とさくらは答えると
「じゃあ、体育館は?」
「うん、わかった」と返事をすると
「じゃあ」と出口で待っていた友達連中と合流して教室を出ていった。
友達連中に見られていたのは視線を感じてわかっていた。
ふぅっと緊張が溶けて無意識にため息をついていた。
「さくら、どういう事?」
隣で聞いていた舞子が聞いてくる。
「あっ、あのね……」
舞子と歩きながら夏休み中にカフェで財布を忘れていて、立て替えた事を話した。
「へぇ、よくさくらの事を知ってたね」
「うん、びっくりした、やっぱり、背が高くて目立つのと…一緒にいる女の子に注意した時に覚えてたのかな(笑)」
恥ずかしいねとさくらは言うとそんなことないよと舞子は言ってくれた。
舞子と別れてさくらは体育館の方向に向かう。
佐野くんが先に待っていて、さくらに気づくと白いジャージのポケットから1000円札を出した。
えっ、直接ポケットに入れてるの?
財布を持たない人かな?いやでもカフェで財布って言ってたから財布は持ってるか。
「ありがとう、あの時は助かった、無銭飲食になるところだった」
さくらは1000円札を受け取ったが…
(正直に言っても大丈夫かな…)
「あの、佐野くん、言いにくいんだけど足りないんだ」
「え?」
「彼女、パンケーキセットを食べてたみたいよ」
あの日のレシートを佐野くんに渡す。



