憧れだった貴方と恋をする〜左小指のピンキーリングは素敵な恋を引き寄せる〜


何かを作っているのは間違いないが、熱のせいで言葉を発するのもダルい遥海だった。

しばらくすると卵を溶いたあったかいうどんをテーブルに置いた。

「はい、多分何も食べてないんでしょ?」

風邪薬と水も置いた。

体温計も奥から出してきて佐野くんの脇に挟むと38度あった。

「ほら、熱あるじゃん」と見せてから体温計をしまいに行く。

パタパタとスリッパの音が響く…

遥海を迎え入れてからさくらは動きっぱなしだ。

「明日、部活とバイトに出たかったら、今日ゆっくり休んで、あっ授業もね!」

「ぷっ、授業がついでかよ」


いただきますと言ってズルズルとうどんをすすりながらやっと笑ってくれた。

「はぁ……美味い……」

(よかった、食べてくれた)

さくらは部屋から体を拭くシートとTシャツを持ってきた。

「これ、着替えて、汗かいたでしょ」

「サンキュ」


「佐野くんでもサイズ合うと思うよ、私も大きいから(笑)」

「ご馳走様……この前……遥海くんて呼ばれた……けど?」

喉が痛いからゆっくりポツリポツリと言葉を切りながら話す遥海。


さくらはピタッと動くのをやめた。


「え?嘘でしょ」

さくらは真っ赤になった。

「言ってないよね?ちゃんと佐野くんて意識して、あっ、何でもない」

さくらは手で口を塞いだ。


「私は……佐野くんて呼んでるよ」

そう…意識して確か呼んでたから遥海くんとは言ってないはずなんだけど…


「この前…ゴホン、俺の出てる雑誌を抱きながら寝てて、その時に遥海くんて言った(笑)気持ちよさそうに寝てたから悪いと思ったけど起こさず帰ったけどな」

さくらは真っ赤な顔で恥ずかしくて頭を下げた。

「寝言!?恥ずかしい……ごめんなさい!」


「いや、名前で呼んでくれていいよ、何なら呼び捨てでも」


「む、無理無理、佐野くんは憧れだから……」

さくらは両手をヒラヒラと横に振る。