(あっ、寝てた……)
さくらは目覚めるとリビングへ行った。
(あれ?佐野くんがいない……)
テーブルの上には大学ノートの切れ端が置かれていて、ありがとう、部活に行ってくる、あとカレー美味かったとメッセージが残されてあった。
(起こさなきゃと思ってたのに、自分が寝てしまうなんて…もう…私のバカ…)
無意識に左手の小指を触っていた。
(自分でもドキドキした、佐野くんを部屋に誘ってしまうなんて……)
また話す機会はあるかな?なんてそんな事を考えていたけどあれから何も無く1ヶ月が過ぎた。
佐野くんの集団は相変わらずうるさいから遥海〜って名前は聞こえるからゼミには来ているようだ。
前から佐野くんの声はあまり聞こえなくて今でも話を積極的にしている様子はないようだ。
舞子といつも奥の前の方に席を取るので後ろを振り返ることも無く、講義が終わると入り口近くの後ろの席に座る佐野くんのグループはすぐ教室を後にするのだ。
「さくら、今日学食に行かない?」と舞子にある日誘われて学食に久しぶりに行った。
いつもは家に帰るか、構内のカフェが多いんだけど、舞子ががっつり食べたい気分なのと言うから…
舞子はカツ丼を、私は生姜焼き定食を注文した。
(学食も安いのに佐野くんは食べないのか……)
少し離れた所に佐野くんがいつもいるグループの男子2人がお昼を食べていた。
「遥海、熱出したって大丈夫かなぁ」
「昨日からしんどそうだったよな、講義は全部寝てたし」
「でも部活に行ったんだろうな、遥海の事だから」
(えっ?)
食べ終えた食器を下げに行くと後ろから佐野くんの友達も食器を下げに来た。
「部活も大変だな」
「特待生はマジそれな」
舞子に行こうと言われてそのまま学食を出た。



