最近まともに食ってなくてさーと凄く自然に佐野くんは話しかけてくれる。
いつものグループでもあまり佐野くんの声は返事くらいしか聞こえないんだけど、案外人見知りしない人なんだ。
なんなら佐野くんの話が緊張であまり耳に入ってきてない私……
(深呼吸、深呼吸)
体育館前から2人で歩いて大学を出る。
「黒河さんだっけ?」
「うん、名前、知ってくれてたの?」
「前にうるさかった女子に注意してくれた時に女子が言ってた」
「あー、あの時はごめんね、我慢出来なくて」
やっぱり、あの時に覚えてくれてたんだ。
「いや、俺らが注意しなきゃだったよな、ごめん」と謝ってくれた。
「あっ、俺の名前も知ってくれてたんだな、さっき呼んでくれたよな」
(気づいてくれたんだ)
「あっ、うん、佐野くんは有名だからね」
そっかな?と手を顎に当てて考えていた。
「あのさ、違ってたらごめんだけどバスケ部に最初来てなかった?」
さくらはびっくりした。
「見学と、体験もしました」
さくらは恥ずかしそうに下を向いた。
「やっぱり!その時に背高いし、美人だなと思って顔は覚えてたんだよな」
「嘘!」
さくらは隣で歩いてた佐野くんを見ると目が合い、思わず真っ赤になってまた前を向いた。
「マジマジ(笑)」
(嬉しい、見学の時に見てくれてたんだ)
その時、佐野くんはもう練習に参加してたんだよね。
さくらは部活は実力が追いつかないと判断して、サークルの方でバスケをしてると佐野くんに話した。
「まあ、ここは全国から集まってるからな、俺もスポーツ特待生じゃなかったら、ここには来てないかな」
「練習キツイでしょ?」
「まあな(笑)」
佐野くんは笑いながら答えてくれた。
ご飯食べないとついていけないよ、佐野くん…



