伝えたい想いは歌声と共に

「なんで? どうして?」
 とても信じられなかった。だってこんなの、絶対におかしい。
 ユウくんはずっと昔に亡くなっているのに、あの頃と変わらない姿でここにいる。
「……藍?」
 もう一度私の名前を呼ぶ。けどその直後、慌てたように言った。
「あっ、ごめん。君が知っている子に似てたから、つい。いや……似てるのかな? 背も歳も、全然違うのに……」
 もしかして、私のこと気づいてないの?
 だけど、無理ないか。
 ユウくんの姿は四年前からちっとも変わってないけど、私はその頃よりずっと背が伸びたし、それ以外だってそれなりに大人っぽくなってる。
 むしろ最初に名前を呼んだ方が不思議なくらい。
 私は私で、このわけがわからない状況にパニックになっている。
 どうしてユウくんがここにいるの? 幻覚じゃないよね?
 もう一度ユウくんの姿をまじまじと見ると、あることに気づく。
「体、透けてる」
 ユウくんの体は薄っすらと透き通っていて、微かに向こう側の景色が見えていた。
「本当だ」
 どうやらそれは、ユウくん本人も気付いていなかったみたい。
 私の言葉を聞いて、興味深げに自分の体を見ている。
 それから、改めて私に言う。
「えっと、驚かせちゃったかな? こんな事言うと変な奴って思うかもしれないけど、俺は多分、幽霊だと思うんだ」
「幽霊……」
 やっぱりそうなんだ。
 普通なら、とてもそんなの信じられない。
 だけど、死んだはずの人が現れたんだ。そうでもなきゃ説明できない。
「と言っても、俺が死んでからどれくらい経ったんだろう。数日? それとも数年?」
 その辺はよくわかっていないのか、ユウくんは首を捻りながらそんなこと言う。
 その仕草は、私の知っているユウくんそのまま。
 例え幽霊になっても、そういうところは何も変わってない。
 それを見て、なんだか妙にホッとする。
「──四年くらいかな」
「えっ?」
 死んでからどのくらい経ったのか。その答えを教える。
 それを聞いて、ユウくんは小さく声をあげた。
 それは、そんなに時間が経ってたことに驚いてるんじゃなくて、どうして私がそれを知っているのか、それがわからず不思議がってるように見えた。
「君は、だれ?」
 それに答えるのは簡単。だけど私は、何も言わずに、じっとユウくんを見る。
 さっきユウくんは、私のことを藍って呼んだ。あの頃とはたくさん変わったのに、私だって気づいてくれた。
 それが嬉しくて、またユウくんに気づいてほしかった。
 ユウくんはそんな私を見て、ハッとしたように叫ぶ。
「藍! 藍なのか!?」
 また、呼んでくれた。
 ただし今度は、さっきよりもずっと力強く。
 その瞬間、私の目から涙が零れる。
「そうだよ。私、中学生になったんだよ」
 私の声は震えていて、目から涙が溢れてくる。
 だけどこの涙は、決して悲しいものじゃない。
 たくさんの涙を零しながら、それでも私は笑った。
 それを見たユウくんも、笑いながらながら言う。
「大きくなったな。藍」
 四年ぶりに見るその笑顔は、あの頃と何も変わっていなかった。