「我は我が愛したものと過ごすことを望む!それ以上はいらぬ!故、生き延びてみせよ。もう我は止まらぬ。誰にも我を止めれる人などおらぬのだ!さぁ開戦だぞ人間共。せいぜい生き延びてみろ」
そして我は一気に、紫魔球に貯めた魔力を解放した。各国の森に魔物が出現し始める。国が暴れる。国民が逃げ惑う。兵士たちが勇敢に立ち向かう。そんな姿を見て私は思う。
「人間は素晴らしいな」
我のように魔力を失わない魔導士たちとは違い、人間は生きることに貪欲で闘志を燃やす。そんな姿が羨ましいと同時に、愚かとも思う。
「大切な物が無い世に生きる価値など何ひとつとして見いだせないのだからな」
大きくなった紫魔球のの周りを箒でぐるぐると飛び回り続けるのだった


開戦した。もう戦うしかない。
「全軍!命をかけて国民を宮廷を守り抜け!」
風に乗せて命をかけて国を守ると誓ってくれた兵士たちに告げる。我々王族は宮廷魔導士の報告を聴きながら、同時進行で戦略を立てていく。絶対滅ぼさせやしない。この帝国だけは絶対守り抜く。そう決意し、王太子カイレ・ユリラを中心に会議を回していくのだった。
守りきれず、門を超え、魔物が街を荒らし、建物がかなり崩壊してしまった。作物を全部狩り尽くされているだろう。それくらい、あれから、何時間、何十時間と経過した。戦い続けて約3日。ずっと魔物と戦い続けた。だが、最初とは違い下級魔物が多いらしく兵士たちもだいぶ楽になってきているそう。だが、量は変わらない。一体いつまで続くのだ、、、終わりが見えないこの地獄に私は途方に暮れていた。だが、突然「は!?!?」宮廷魔導士が叫んだ
「なにかあったのか?」
「魔物が突如として消えました。」
その報告に私たち王族はとても驚いた。消える気配のない、全滅する気配のない魔物が全て消えたというのだ。安堵をしようとしたが、王妃、ユリに諭されてしまった
(安堵なさらないでください。ことあと起こる可能性を導き出してください。まだ戦いは終わっておりません。戦争は相手国の主が死ぬまで終わらないのですよ)
その言葉で私はハッとし、思考を回す。今後考えれる可能性はなんだろう。そもそもとして魔物が急に全て消えた原因は?該当する原因が2つ。1つ、雫の魔力切れによる、魔物維持不可。これは可能性が少ないだろう。雫の魔力量には底が見えない。故、切れなどないのだ。2つ。雫がわざと回収。これが一番可能性が高い。ではなぜか?それを私は思いつき、この場にいる4名に告げた
「雫はきっと、魔力を自ら回収した。それにより、起こる可能性は二つ。雫が自ら大陸を滅ぼすと雫にとってユリラ帝国が一番面倒なのだから我らに魔物を集中、もしくは国ひとつ滅ぼせる魔物を出現させる。このふたつが考えられる。ではどうするカイレ」
私はここまで導くのに疲れてしまった。いかんな歳だ。だから私は王太子にバトンタッチをした。カイレは思考する。どれが一番なのかを考えているのだろう。忖度なしにこの国が生き残る方向で
「兵士を集めましょう。雫は正々堂々が好きなタイプです。王宮の真正面に魔物を出現させます。なので王宮の前に兵士を集中させてください。大量の魔物が出たら、即座に兵士に王宮を囲んでいただき、迎え撃ちます。」
私は「よし、手配を速やかにせよ」と即座に命令を下し、動いた。否定している時間はない。動けるならすぐ動く。たとえそれが最善策出なくても構わない。国を守るのだ。
配置に着いたと連絡を受け、「待機しろ」と伝え1日がたった。あまりにも行動が遅い。何を考えているのだ雫。私にひそなたの思考が一切読めない。聞けない。宮廷魔導士に無理をさせすぎてる。まさか、、、この緊迫した状況を維持し、兵士たちの体力を奪う気ではないだろうか。それが頭によぎり始めると急にとても焦った。だが、その焦りを超えるほどの驚きを私は目の当たりにした
「なんだ、、、なぜ急に光った。地面から光の粒が空へと舞っていっている。なんだ、、これは一体なんなのだ」
その光の粒は半日で終わりを告げた。それで街を見てみると街が戻っていた。視界に入る限りでも作物は育ち切り、建物はしっかりと建っている。それに、道路も補修工事中だった場所が完成されていた。この光景に言葉を失っているとバンッと扉が開けられた。扉を開けた人物は宮廷魔導士だった
「ご報告します!!雫様が、、、雫様の魔力がこの世から消えました」
魔力が無くなった。つまりは死んだ。魔力を使い切ったのだ。まさか、、、魔物を回収したのは魔力を自分に戻し、この大陸を復活させるためだと言うのか、、、彼女との会話を思い出す。彼女は言った
《伝説を残すのが目的だからね》
人ならざるものは魔導士雫のこと。大陸は滅ぼさなかったが、窮地に立たせた。彼女は大陸を滅ぼしかけたという伝説と大陸を半日で元通り、、いやそれ以上にした大陸の救世主。その2つの伝説をこの1週間にも満たない時間で作り上げてしまった。
「まったく、、とんでもない女だ、、、自作自演ではないか雫よ」
きっと彼女に悔いはないのだろう。彼女は死ぬことが目的だった。この大陸に最後まで貢献し、今後忘れることなく語り継がれる伝説を残したのだ。彼女は2つの目的を完遂させ、人生を終えた。終わったと思うと肩の力が抜け、王なのにそこに座り込んでしまった。それについて宮廷魔導士は何も言わず、
「どうなさいますか」
と問うてきた。それに私は未来に希望を持ちながら言った
「祭りの準備をせよ、、国を巻き込んだ祭りを開催するぞ!」
一礼し、宮廷魔導士はそれを伝えに行った。
さて、私もこれからもっと頑張らねばならぬな。雫は大陸に幸せをもたらした。だが私はユリラ帝国の王だ。ならばやることは一つだ。国民たちももっともっと幸せにせねばならぬ。それでなければ死んだ時雫に面と向かって感謝を伝えれぬというものだろう。
「よし!働くぞ!!」
そしてユリラ帝国、、強いては大陸が良い方向へと向かい始めたのであった