あれからの日々はのんびりとしていた。基本は王宮内で過ごし、たまに町に下りる日々を繰り返した。
「今日は何を食べようかな」
初日に食べたお気に入りの肉の串を食べながら町を歩く。町に下りてすることはその国名物の物品とかは見ずに食べ物ばかりを探す。一般の女の子たちは太りたくないとか思うらしいが、私は痩せ型だ。それに沢山食べてお肉つけないとドヤされちゃうからね。もちろん、王城で食事も貰えるが、少々量が少ない。まぁだからといってそのままにする訳もなく、私は次の日から果物をたくさん欲しいと厨房に頼んだ。もちろんその果物代は請求して持っていいと一言添えて。
のんびり肉の串を左手に10本持ち、1本ずつ食べながら歩いていると私の目に止まる食べ物が売られていた。
香ばしい塩の香り。この煙たい空気は焼鳥!!10本もあった肉の串をガッガッと食らいつくしその店を経営しているおじちゃんのところに向かう
「おじちゃん!これなーに?」
「あぁ、嬢ちゃん。これ気になるのかい?これはな、鳥肉とネギを合わせ焼いた焼鳥だよ。こっちはただの焼鳥。こっちは鳥の皮を焼いた皮串ってところかな!」
「へぇー!美味しそう」
このおじちゃん、私のことを嬢ちゃんと言った。今までのお店の店主は「し、雫様!?」と驚き半額とかしてくれたのにこのおじちゃんは「嬢ちゃん」。んふ。気に入ったわ
唇を舌でなぞる
「おじちゃん、私が誰かわからなーい?」
「雫様だろう?だがすまないが今はお客だ。雫様だろうが贔屓はしないさ」
んーやっぱりこのおじちゃんいいね。よし決めた。この店私のお気に入り店第2号にしよう!そしてこのおじちゃんは何がなんでも殺さないぞ!
「いい心がけだよ。よしじゃあお客として注文だ!3種類の串を10本ずつくーださい!」
「嬢ちゃん食いっぷりがいいなぁ。」
にこにこいいながら、どんどん袋に詰めるおじちゃん。其の姿は楽しそうで、少しだけ、彼の姿に重なった。彼を思い出すと涙が出そうになるが、堪えて、
「あいよ!まいどあり!」
と言われ渡された袋を両手でしっかり受け取った。
いいものが手に入ったので私は空の散歩を始めた。
澄んでる空気が心地よくて散歩がとても楽しい。
早速、貰った焼鳥を食べてみることにした
バクっと食べた瞬間にじゅわっと溢れた肉汁が口いっぱいに広がり、ネギはその肉汁を爽やかにしてくるいいアクセントだ。普通の焼鳥の方はいいタレが付いていてとても美味しい。少し焦げもあり、美味だ。皮の方はパリッとしていて噛みごたえがある。
「んー!素晴らしい!あぁいいわね。おじちゃんのところまた遊びに行こ。経営できるようになったら!」
食べ終わり、お腹が満たされたのでハイスピードで大陸中を回った。喜び溢れる笑顔。悩み、苦しんでる人の顔。辛くて仕方ない人の顔。その顔を忘れぬよう目に焼き付け、私は中心に戻る。私は大陸の中心点に止まり、上へと上昇した。上昇すると私にだけ見れる紫の球体に触れる。そして一気に魔力を注ぎ込む。それと同時に、各国に微弱な魔力を送った。これをすることにより、各国に声を届ける
「さぁさぁさぁ皆々様!いきなりの声驚きのことでしょう!ですがそんなことで驚いている暇はございません。今から私が申し上げるのは世界への喧嘩!!大陸中心をご覧くだい」
大陸に住む人々が私に注目するのを感じる。そしてどんなに遠くからでも見えるであろう紫色の球体を視界に入れ、宮中の中は今頃大慌だろうか。
御前会議とかが開れているかもしれない。その様子を想像したらなんだか面白くてでも少し悲しくてくすくすと笑いが漏れた。切り替えて私は状況を説明し始める
「この紫の球体は魔物の塊。そして核のなるのはこの私!私の魔力が尽きるまで魔物は無限に大陸全土に出現し続けるのです!魔力がため終わるは今から半日後。各国の王族よ!兵士よ!準備なさい!」
上空の薄い空気をめいいっぱい吸い、宣戦布告をする
「伝説の魔導士対大陸の戦争のはじまりよ」

半日、、つまりは12時間。だが猶予は10時間くらいだろう。
とりあえず、王族のみで会議を開くことにした。
帝王である我と帝王妃のユリ。そして王太子の座に就いたカイレ。そして王女のサチ。4名だけで行われる会議。貴族など交えぬ。王族だけで決定し、それが国の方針とする
「では皆よ状況は理解しておるな?」
一斉に頷く3人。それを確認し「では、案があるものはいるか?」と問いかける。「では、よろしいでしょうか」とサチが手を挙げる。許可など求める必要がないのに求めるところはサチのいい所だ
「良いぞ」
「帝国民を王宮内で保護するのです。王宮と国民が守られればいくらでも復興は可能です。戦闘の面ですが、貴族が保有する兵士を全員貸していただき、帝国のために命を捧げていただきます。その数およそ25万名。そのうち、5万は王宮の守護に回します。」
「私も賛成です」
声を上げたのはカイレだった。
「むしろそれ以外にいい案はない。これ以外の案を考えるより、これが最善だと思い、準備をした方がいい。」
「そうじゃな。だが、他国とはどうする。もう既に鳩につけられ共闘の申し出が来ている」
その問いに対して答えたのはまたもやカイレだった
「少し心のない案にはなってしまいますが、他国は捨てましょう。この戦争、我が国さえ残っていればいいとは思いませんか?もし他国が滅びたとしても我が国が残っていた場合、こちらに利益が必ずあります。帝国死守。これに限ります」
(帝国死守、、ですか。)
「なにか気にかかることがあるのか?ユリよ」
(いえ、カイレの意見には賛成です。我が国はそれだけの財力がある。カリスマがありますから。ですがまずそろそろとして雫さんがこのようなことを考えた理由がいまいち分からないのです。)
「理由、、ですか」
カイレとサチの声が被る。少し沈黙な流れる。2人は雫が滞在中に何度かあっているため、真剣に考えれるようだ。その沈黙を破ったのは私だった
「では、その理由を聞こうぞ。」
「宮廷魔導士にお願いしますか?」
「あぁ、風に乗せて、雫の元に声を届けよう」
(承知しました。戦争開始後、兵士たちが状況に慣れ始めた段階で始めましょう。サチ、準備を)
「は、はい!お母様」
ユリの指示を聞き入れ、慌てて部屋を出た。
「サチ、嬉しそうでしたね。久しぶりに母上の声を聞けたからでしょうか」
クスクスと妹の笑顔を笑っているようだった。
「よし、では先程決めたことを元に貴族に知らせよ。カイレ」
「お任せ下さい。完璧な陣を形成致します」
カイレは戦争時の対陣形成を任せている。その際は帝国歴史を遡ってもいないものだ。初めてチェスをやり、教師を圧倒。その際を見込み1度のみ戦争を任せたが、圧勝という勝利を収めて見せた。とても優秀な息子を持ったものだと誇りに思う。
「では、我々も動こうか」
(えぇそうですね)
そして我々ユリラ帝国は死力を尽くし、戦争に勝ちに行く準備を始めた