急行列車が過ぎた後で

私と尚人くんが乗り込んだ電車は、次の停車駅に滑り込んでいく。車内アナウンスが流れ始めた。

アナウンス「まもなく、▽▽、▽▽。お出口は左側です」

ここは乗り換えが多くある駅だ。さほど混んでいなかった車両だったが、この駅で多数の人が降車し、この車両には私と尚人くんと、少し離れた席におじいさん一人いるだけになった。

車両には静けさが満ちている。

智花「…私さ…」

尚人「うん」

智花「あんなに嫌なことがあったのにさ、その日から佑のことが気になって気になって仕方がなくなったの」

尚人「…」

智花「…気になって気になって。気まずくなった後に、友達の好きが変わっちゃった」

尚人「…」


そうか、私が初恋を忘れられない理由。

あの事件がきっかけで、それまで意識していなかった佑の存在が、突然、私の心の中で大きく膨らんでいった。

あの告白が佑にとってどれほど嫌だったか、どれほど恥ずかしかったか、想像するだけで胸が痛む。
でも、その痛みと同時に、佑のことをもっと知りたくなった。

それは、純粋な「好き」という言葉だけでは片付けられない、複雑な感情だった。
後悔と、知りたさと。
そして、もしかしたら……もう一度、何かが始まるんじゃないかって。
そんな淡い期待がどこかで消えずに残っていたんだ。


あの日の出来事が、

私の初恋を
まるで時が止まったように、

私の中に置き去りにしていた。