急行列車が過ぎた後で

……何か気に障ることでもしてしまっていたらどうしよう。
そんなことを考えていたら、目の前の人が口を開いた。

?「……あの?えっと……智花ちゃんだよね?」

智花「……え?」

?「あれ、向かいの人、どこかで見たことあるなって思ったんだよねー。すっげー久しぶりじゃない?」

智花「ご、ごめんなさい……えっと……」

尚人「あー、俺のことわからない?尚人だよー。かのんと付き合ってるのにー」

智花「……あー!」

かのんは私の前で彼氏の話をあまりしない人だから、写真も見せられたことはなかった。だから、九年後の尚人くんの姿を全く知らなかったのだ。

智花「えっと、すごく身長伸びたね……あと、やっぱり大人になってるし……全然わからなかったよ」

尚人「俺はすぐに分かったけどなー。……つーか、一応成人式で会ったじゃん?」

私「……そうだっけ」

尚人くんは私の隣の席に座った。


去年の成人式で、私が彼について記憶がないのは心当たりがあった。私は新年早々インフルエンザにかかり、成人式には病み上がりの状態で参加したためだ。

朝の六時に着付けてもらった振袖は病み上がりにはかなりきつく、老人たちによる長い話が続く成人式では、軽く死にかけていたことを覚えている。

尚人「あ……会ったっていうか、あれだわ、俺が一方的に見かけたって感じかな」

智花「あーでも私、インフルの病み上がりでの参加だったから、成人式あまり記憶にないんだ」

尚人「へー、そうだったんだ。じゃあ、佑とも会ってないの?」

私「……なんでそこで佑が出てくるの?」