急行列車が過ぎた後で

思考の沼に沈んでいた私の耳に、車掌さんのアナウンスが響いた。

「まもなく、3番線に、各駅停車、●●行きがまいります。危険ですので、黄色い線の内側までお下がりください」

私ははっと我に返り、椅子から立ち上がった。こんなに沈んでいる場合じゃない。今日は友人である、かのんの誕生日会の予定があるのだ。

それに、いまだにプチ同窓会のことを引きずっているのがバレたら、それこそ大恥だ。とりあえず今日はもう、このことは考えないようにしよう。

約束したのはここからだいたい30分くらいの場所。約束の時間までは1時間あるから、余裕をもって着くことができる。

ホームに電車がやってくる。この電車に足を踏み入れた瞬間、完全に気持ちを切り替えよう。大きく息を吸って、私は電車に乗り込んだ。

空いていたドア付近の席に腰を下ろし、スマホを開いた。

智花「……?」

なぜか、向かいの席に座っている人から熱い視線を感じる。同い年くらいの男の人。見覚えはない……と思う。

その人は向かいの席からすくっと立ち上がると、こちらへ近づいてきた。私はスマホを見て気づかないふりをしようとしたが、動揺して、かのんの誕生日プレゼントを落としてしまった。

誕生日プレゼントをポットとカップのセットではなく、ポーチとハンカチにしておいて本当によかった。前者にしていたら、きっと今頃悲しいことになっていただろう。

いや、今はそんなことを気にしている場合ではない。

私は落としたプレゼントを拾おうとしたが、時すでに遅し。近づいてきた男の人が、それを拾い上げていた。