私の心の支えは渚君

「あの土地は、女房との思い出の土地だったんだ。俺がまだ55の時に女房に先立たれて、でもあの土地で育ててた畑の作物が俺の唯一の心の支えだった。だから、あんたが思い出の土地を有効に活用できるっていうから、あんたに預けてみようと思ってな。でもあんな形で奪い取られて、もう俺の人生終わりだと思っちまってな」
それであんな事をしちまって、本当にすまなかった
男の人は肩をガックリ落として泣きながら言った

「頭を上げてください。石田様の大切な思い出に付け入るようなことをしたのは私です。謝るのは私の方ですから、もう謝らないでください」
渚君はその男の人に心から申し訳なさそうに頭を下げている
「俺にはもう生き甲斐がないんだ。あの土地も今は人に貸してる。たまにはここに来て俺の話聞いてもらってもいいか？」
その男の人はやっぱり申し訳なさそうだけど、でも少しスッキリした顔で言った

「勿論。いつでもご来店ください」
渚君は清々しい顔で笑顔で言った

その男の人はゆっくりとアイスコーヒーを飲んで嬉しそうにお店を後にした

「またのご来店をお待ちしています」
渚君は晴々しい顔で男の人を見送った