パッロの言葉に、リンコがさらに目を剥く。
「パッロ! 甘やかしすぎよ!」
リュミは唇をきゅっと噛んで、巣の奥の蜘蛛をじっと見つめた。
あの姿は、どうしても悪い魔物には見えない。
逃げ場を求めてきたような――そんなふうに見える。
そのとき、エルドがぽつりとつぶやく。
「……おかしいな」
「なにが?」
リンコが問い返す。
「藍影の魔蟲は、もともと森の奥深くを好んで巣を張る魔物だ。こんな畑のそばなんて……来るはずがない」
エルドの言葉に、全員が沈黙する。
これは、異常事態だ。
つまり、なにかがあって、藍影の魔蟲はここに来るしかなかったということ。
(ここにいたくているんじゃない。逃げて、逃げて、そうして来たのがここだったんだ……)
居場所をなくすのは、とてもつらいこと。
リュミだって……あのとき、同じように感じた。
自分が悪いわけじゃないのに、そこにいるだけで居心地が悪くなって。
声を出すのも苦しくて、誰にも言えなくて、どうしていいかわからなくて。
(……わかるよ)
心の中で、そっとつぶやく。
まるで、藍影の魔蟲の気持ちに、手を伸ばすみたいに。



