「ふわふわにしたら……お話しできるんじゃないかな⁉︎」
その言葉に、場の空気がぴたりと止まった。
「だめだ」
沈黙を破ったのは、エルドの低く鋭い声だった。
いつもと違う、張り詰めたような、感情を押し殺すような響きをしている。
「危険すぎる。近づくな。糸に触れたら最後、抜け出せなくなるぞ」
「え……?」
リュミは思わず目を瞬かせた。
今のは、本当にエルドの言葉だったのだろうか? 彼ならきっと「やってみろ」と言うはず。
観察し、記録し、結果を知るためなら、多少の犠牲には目をつむる――リュミが知っているエルドは、そういう人だ。
それなのに、止めた。
しかも、心配そうな目でリュミを見て。
観察対象であることに慣れすぎていたリュミは、その言葉に完全に意表を突かれていた。
胸の奥がふわっと熱くなる。うれしいとか照れくさいとか、そんな単純な感情じゃない。もっと深くて、やさしいなにか。
そんな場合じゃないのに、笑みがこぼれそうになった。
「そうよ! あんなのに近寄るなんて、正気じゃないわ!」
リンコがぷんすか怒っている。
「……リュミの勘は、ときどき当たる」



