「ふむ……八つの目……うち二つは退化……足の欠損は……なるほど、二本か。それにあの、印象的な傷……」
エルドがぽつぽつと観察結果を口にしていく。その声はどこか機械的で冷静だ。
「エルドさん、あの子のこと知ってるの?」
リュミが思わず声をかける。
「ネームドモンスター《藍影の魔蟲だろうな」
エルドの目が細くなる。警戒と分析の色が濃くなった。
「らんえいの、まちゅう……」
その名を聞くだけで、背筋が凍るような寒気が全身を走る。
けれど、リュミにはどうしても、そんなふうに思えなかった。
じっと縮こまっていて、まるで身を守るように巣に体を預けている。
その目は、どこか怯えているようにさえ見えた。攻撃的というより、むしろ逃げ場を失っているような。
「……こわがってる?」
リュミの口から小さなつぶやきがこぼれた。
その瞬間、リンコがぐわっとこちらを振り向く。
「なに言ってるの? どう見ても襲ってくる気満々じゃない!」
「でも……」
リュミは言いかけて、唇を噛んだ。
胸の奥がドキドキしている。理由はわからない。でも、なにかが引っかかっている。
説明できないけれど、たしかに感じる違和感。
そして――ふと、閃いた。



