「同じとは限らない」
パッロが、鋭い目つきでリュミを見つめながら言う。
だが、その声音には警戒の色が濃くにじんでいた。
「でも、同じだとしたら厄介だわ。あんなのが広がっていたら、リュミに危険が及ぶもの」
リンコもまた、ふだんの軽口とは違う、真剣な声。
その目は、今にも飛び出してリュミを庇おうとする獣のように鋭く光っている。
ふたりの視線が、リュミに注がれている。
どうすれば守れるか。どう動けば最善か。
その思考が、言葉にしなくても伝わってくる。
「蜘蛛か……もしや、ネームドモンスターか……?」
エルドの口調も、いつになく重かった。
ただの魔物ではない。パッロやリンコと同じ、名を持つ魔物。軽々しく近づけば、命を落とす危険さえある。
「畑へ行く道もふさがれちまった。このままじゃ、村の暮らしに響く」
村人の訴えは切実だった。
このままでは、作物の収穫も、家畜の世話もできない。生きるための道が、ふさがれている。
(助けたい……)
リュミの心の中に、ぽつりと声が落ちる。
胸の奥に、さざ波のように広がっていく。
けれど同時に、足が竦む。
あのとき感じた、恐怖の記憶――糸に絡め取られ、自由を奪われ、目の前で命が消えていく感覚。
(こわい。本当にこわい……)



