「……これが禍翼の凶鳥とは思えんな」

「わたしは禍翼の凶鳥! 恐ろしく、気高く、そして孤高なる存在よ! ……でも、リンコって呼ぶことを許してやらないでもないわ」

 威厳を取り戻そうとするように胸を張るリンコだが、ソースのついたくちばしがすべてを台無しにしている。
 その滑稽さとかわいらしさに、リュミはつい肩を揺らして笑ってしまった。
 エルドはふっと短く息を吐き、静かに言う。

「ふむ。凶鳥が、こうして平和に食事をする光景も……悪くないな」

「……悪くないとか、何様なわけ⁉︎ でもまぁ、このおいしいごはんに免じて許してあげるわ」

 口調はツンとすましているが、リンコの目はどこかうれしそうに細められている。

 笑い声とツンデレな抗議、そしてエルドの淡々とした口調が絶妙に混ざり合い、にぎやかながらも心安らぐ時間が流れていく。

 そうしてようやく――リュミの胸の奥に、深い安堵がしみわたっていった。