「……あんたに嫌われないなら、それでいいわ」

 その言葉はぽつりと、リュミにだけ届くような小さなささやきで。
 胸の奥がじんわり熱くなった。

 *

 ランプのやわらかな灯りが、部屋を照らす。
 木のテーブルには、エルドが手早く用意した、簡素ながらもあたたかな食事が並んでいる。
 湯気の立つスープ、焼きたてのパン、香草の炒め物に、香辛料の香る小さな肉団子。どれも素朴だけれど、ほっとする品々だ。

 リュミは小さな椅子に腰を下ろし、膝の上にリンコをちょこんと乗せる。
 パッロはリュミの足元、椅子の横に静かに座って、尻尾をふわりと揺らしている。

「……さあ、食べるか」

 エルドが無愛想に言いながら、木の皿をひとつずつ配っていく。
 ぶっきらぼうな手つきだが、その動きにはどこか慣れがあって、不器用ながらも丁寧な心遣いがにじんでいる。

 リンコの前にも、小さな皿が置かれる。
 彼女はきょとんとその皿を見つめていたが、次の瞬間、ぱっと目を輝かせた。

「な、なにこれ! おいしいにおいがするわ⁉︎」

 言うが早いか、くちばしをすばやく皿の端に伸ばす。

「……勝手に食べるな」

 エルドは淡々とたしなめるが、リンコは聞いていない。
 むしろ「早く言ってよ」とでも言いたげな勢いで、ぱくっと肉団子を頬張る。

「うっ……うまっ!」