気がつくと、リュミの足元に、ちょこんと丸い生き物が座り込んでいた。

「……あれ?」

 あの禍々しい鳥は、どこにもなかった。
 代わりにいたのは、アヒルくらいの大きさの、ふわふわした羽毛に包まれた鳥。赤い羽は太陽みたいに明るく輝き、顔にはチークをのせたような、愛らしい丸い模様がある。目はくりくりとしていて、どこか拗ねたような、でも寂しげな輝きを帯びている。

「かわ……いい」

 リュミは思わず、両手でそっと鳥を抱き上げる。
 鳥はバサッと羽を羽ばたかせて、リュミの顔をじろっと見上げた。ん丸な目に、まだちょっとツンとした鋭さが残っている。

「な、なに勝手にこんな姿にしてんのよ!」

 女の子のような声。
 ちょっと怒っているようで、でも泣きそうにも聞こえる。

 パッロがゆっくり近づいてきて、ふっと笑う。

「……ふわふわ化、成功したな」

「成功……?」

 リュミが首をかしげると、鳥がバサッと羽を広げて叫ぶ。

「わたしは《禍翼の凶鳥》よ⁉  空を支配する恐怖の象徴よ⁉ ……だったのに……なんでこんな……アヒルみたいな姿に……!」

「アヒルじゃないもん! かわいいよ!」

「か、かわ……っ⁉ な、なに言ってんのよ! べ、べつにうれしくなんかないし!」

 ツンツンした口調。でもその言葉のうしろには、照れ隠しのようなあたたかさがにじんでいる。
 リュミはにこっと笑って、そっと問いかけた。