(大丈夫。だって、パッロがいるもん)

 心の中で、しっかりと誓う。誰よりも強く、誰よりもやさしく。

(こわくないよ。おともだちに、なろう)

「……《ふわふわ》」

 リュミの小さな声が、谷全体に響く。
 すうっと空気が澄んで、風が凪ぐ。

 次の瞬間。

「ギャアアアァァッ!」

 空が裂けたような咆哮。
 赤い影が、巨大な翼を大きく広げて急降下してくる。
 そのくちばしは鋭く、リュミをまっすぐに狙っている。

「リュミ!」

 パッロが叫び、前に出ようとする。
 でもリュミは、目を逸らさなかった。両足をしっかりと地面につけたまま、微動だにしない。

 その瞬間、まばゆいほどの白い光が、リュミと禍翼の凶鳥の間にパッと広がる。

「ギャッ……!?」

 巨大な体が光に包まれ、赤い羽がバサバサと宙に舞う。影はどんどん縮んでいって、禍々しい輪郭が、やわらかな光の中で徐々に溶けていく。

 パチン、と小さな音がして。