どれだけ考えても、答えは出ない。
『無能』『失敗作』という言葉だけが、何度も何度も頭の中で反響する。
まるで、それが自分の名前であるかのように。
どれくらい、そうしていただろう。
リュミはゆっくりと体を起こす。
「謝らなきゃ……」
口に出した瞬間、胸がちくりと痛んだ。
謝ることが正しいのかどうかもわからない。けれど、そうするしかない気がした。
(お父様もお母様も、きっと悲しんでる。リュミのスキルが《ふわふわ》だから)
期待を裏切った。恥をかかせた。
貴族の家に生まれながら、役立たず──そう思われているのはわかっている。
(でも……謝ったら、またやさしくしてくれるかもしれない)
そう思いたかった。
ほんの少しでも、やさしい言葉がほしかった。
冷たくても、怒っていてもいい。リュミをちゃんと見て、言葉をかけてくれるなら──それだけでよかった。
鏡の前で、ボサボサになった髪を整える。
なにも変わらない顔。泣きはらした目。
それでも、ほんの少しだけ強くなった気がして、リュミは扉を開ける。
廊下に出ると、足音がやけに響いた。
厚いカーペットの上を歩いているはずなのに、浮いているような気がする。
誰にも会いたくない。
でも、ひとりきりなのも怖い。
矛盾した感情がぶつかりあって、胸が痛くなる。
そのときだった。



