「リュミ、知ってる……その姿を見た人は不幸になるんでしょ?」
空を舞う、赤い影。
巨大な翼が夕暮れの空を裂くように旋回し、冷たい風が谷あいを撫でていく。
その恐ろしさを、誰もが語る。
その名を聞くだけで子どもは泣き、大人でさえ顔を強張らせる。
――禍翼の凶鳥。
だけど、どうしてだろう。
リュミの胸の奥では、その恐怖とは違う、なにかあたたかいものが芽生えていた。
怖くない、と言えば嘘になる。
でも、それ以上に感じるのは、不思議なほどの懐かしさ。
心のどこかで確信している。
本当は襲いたいんじゃない。リュミに近づきたいだけだと。
「ふわふわ、してほしいんだよ……きっと」
ぽつりとこぼれたリュミの声に、そばにいたパッロがはっと顔を上げ、鋭いまなざしでこちらを振り返る。
リュミの気持ちを見極めるように目を細め、小さくため息を吐く。
「……リュミは、そう思うのか」
リュミは、こくんと静かに頷いた。
小さな拳をぎゅっと握りしめて、まっすぐにパッロを見つめる。
(こわいよ……泣きたくなるくらいこわいけど、それでも……)
「やってみる」
その言葉に、パッロの目がわずかに揺れる。
「リュミ……」
空を舞う、赤い影。
巨大な翼が夕暮れの空を裂くように旋回し、冷たい風が谷あいを撫でていく。
その恐ろしさを、誰もが語る。
その名を聞くだけで子どもは泣き、大人でさえ顔を強張らせる。
――禍翼の凶鳥。
だけど、どうしてだろう。
リュミの胸の奥では、その恐怖とは違う、なにかあたたかいものが芽生えていた。
怖くない、と言えば嘘になる。
でも、それ以上に感じるのは、不思議なほどの懐かしさ。
心のどこかで確信している。
本当は襲いたいんじゃない。リュミに近づきたいだけだと。
「ふわふわ、してほしいんだよ……きっと」
ぽつりとこぼれたリュミの声に、そばにいたパッロがはっと顔を上げ、鋭いまなざしでこちらを振り返る。
リュミの気持ちを見極めるように目を細め、小さくため息を吐く。
「……リュミは、そう思うのか」
リュミは、こくんと静かに頷いた。
小さな拳をぎゅっと握りしめて、まっすぐにパッロを見つめる。
(こわいよ……泣きたくなるくらいこわいけど、それでも……)
「やってみる」
その言葉に、パッロの目がわずかに揺れる。
「リュミ……」



