「リュミ、気をつけろ……!」

 パッロの声が鋭く走る。
 その目は、空の一点を射抜いている。

「あれは……禍翼(かよく)凶鳥(きょうちょう)だ」

「かよくのきょうちょう……」

 その名前を耳にした瞬間、リュミの喉が小さく震えた。

 禍翼の凶鳥――それは、見た者に厄災が訪れると語られてきた伝説の怪鳥。
 その姿を、リュミは小さいころ、絵本の挿絵で見たことがある。

 姿を見た者には、厄災が訪れると語り継がれている伝説の怪鳥。
 ずっと前に絵本で見たその姿が、今、現実として目の前にいた。