「無理はするなよ。リュミの力は、これからまだまだ伸びていくんだからな」

 パッロの言葉に、リュミはしっかりと頷く。

「うん。ありがとう、パッロ」

 そのとき、魔物の魚が水面をパシャンと跳ねた。まるで「がんばってね」と背中を押してくれたかのように。
 リュミはカゴを抱え、水辺をあとにする。

「リュミ、《ふわふわ》のこと、ちょっとわかったかも!」

 スキル《ふわふわ》。神官さえ首をかしげた、謎多き力。
 その正体はまだ完全には掴めていないけれど、今日の体験で、ほんの少しだけ、その本質に触れたような気がする。

 《ふわふわ》は、ただ魔物を変える力じゃない。
 傷ついた誰かの気持ちに、寄り添う力。

 その可能性を胸に抱きながら、リュミは軽やかな足取りで森の小道を歩いていく。
 木々の隙間から差し込むやわらかな木漏れ日が、その背中を祝福するかのように、静かにリュミを照らしていた。