リュミの声には、どこか弾むような明るさがあった。この一週間で得た自信が、無意識のうちに声ににじみ出ている。
そして、今日はほんの少し、調子に乗っているのかもしれない。
「うん、でも無理はするなよ」
パッロは落ち着いた声でそう答えた。
体をリュミの少し前に出し、まるで守るような歩き方をするその姿は、頼もしい兄のように感じられる。
リュミはその背を見つめ、そっと胸の中で安堵の息を吐いた。
(パッロがいるなら、きっと大丈夫)
風に揺れる木々の葉がやさしい音を立て、草のにおいが鼻先をくすぐる。
鳥のさえずりも、森の奥へ進むにつれて徐々に遠ざかっていく。空気が少しずつひんやりとし、周囲の気配がどこか静まりかえるように変化していく。
そんな中、不意にリュミの目を引いたのは、草むらの奥でわずかにきらめく光だった。
目をこらすと、その光の正体が少しずつ明らかになっていく――それは、大きな蝶だった。
リュミの頭ほどもある、驚くほど大きな蝶。
その翅は金色に輝き、太陽の光を受けてキラキラと幻想的に揺れている。まるで、絵本の中から抜け出してきたような、美しく、どこか不思議な存在。
「もしかして……魔物?」
胸の奥がひやりと冷たくなる。
ただの蝶ではない、どこか異質な気配。リュミは無意識に一歩、後ずさった。
「リュミ、怯えなくていい。大丈夫だ」
パッロの声が、そっとリュミの耳に届く。その声音には、強くて、静かな安心感があった。
その声に触れた瞬間、張り詰めていた緊張が少しずつほどけていく。
恐怖が少し引いていくと、胸の奥に別の感覚があることに気がつく。



