リュミは小さく頷き、花の茎へと指先を伸ばす。
 手のひらはじんわり汗ばんでいて、茎の感触が指にまとわりつくよう。

 慎重に力を込めて――ぷちん。
 小さな音を立てて、茎が切れる。

 その瞬間、ふわりと香りが鼻先をくすぐる。
 草の青さに、ほのかに甘いやさしい香り。

「……とれた」

 ぽつりとこぼれたその言葉に、リュミ自身が驚く。
 手のひらに乗った小さな白い花が、日の光を浴びてキラキラと輝く。
 まるで宝石みたいだ、とリュミは思った。

「できた……!」

 胸がいっぱいになって、目の奥が熱くなる。

(リュミ……自分で摘めたんだ!)

 感動を抱きしめるように、震える手で花をカゴの中へとそっと置く。
 花がカゴの中で揺れるたびに、うれしさが胸いっぱいに広がっていく。

「えへへ……!」

「よくやったな」

 パッロはうれしそうに、ぐりぐりと頭を押しつけてくる。
 リュミより高い体温が心地良い。安心する。

「初めてにしては上出来だ。リュミには薬草摘みの才能があるかもしれないな」

「……ほんと?」