視線が痛い。
 笑いと軽蔑と失望と、あらゆる感情がリュミの肌を突き刺す。

(どうしてこんなことに? リュミ、がんばったのに……)

 リュミのなにが悪かったのだろう。
 毎日魔法の勉強をして、礼儀作法も習って、スキル鑑定のこの日だって、何度も何度もイメージトレーニングをしてきた。

(それなのに、なんで……?)

「……無能か」

 誰かのつぶやきが、部屋の空気を切り裂く。

 その言葉は呪いだった。
 誰も否定しない。誰も反論しない。
 それがこの場の、答え。

 ──無能。

 たったひとつの言葉で、すべてを塗りつぶされる。
 《ふわふわ》というだけで、すべてを否定される。

 戦えない。癒やせない。
 そんなスキルは、貴族の家に必要だと。
 この世界では、それが常識なのだ。

 リュミは震えた。
 寒いからじゃない。怖いから。悔しいから。

 顔を上げることすらできなかった。
 目が合えば、きっと泣いてしまう。
 それだけは、絶対に──、