リュミは真剣な顔で頷き、手元の小枝をぎゅっと握る。

「リュミ……いつか、自分の居場所を手に入れたいんだ」

 パッロは無言で頷くと、そっと鍵の形をした小枝をリュミの手元に寄せる。

「きっとできるさ、リュミが本気でそう思っているなら」

「うん……ありがとう。内緒だよ、リュミとパッロだけのひみつなんだから」

「もちろん、オレたちだけの、大切な秘密だ」

 そのとき、ふとリュミが顔を上げる。
 遠くの木陰に、三つ編みの影が見えた。

(……エルドさん)

 リュミが小さく手を振ると、エルドは首をかしげるだけで、動かない。

「パッロ、エルドさんが見てるよ」

「うん。でも大丈夫、前より視線がやさしくなっているから」

 パッロの言葉に、リュミは満面の笑みを浮かべる。
 再び腰を下ろし、小さな街の仕上げに取りかかった。

 森の風が木々を揺らし、木漏れ日がキラキラと差し込む中、リュミとパッロはささやかな世界を広げ続ける。
 それは、誰にも壊されない、ふたりだけの秘密の街だった。