「……ちょっと、お散歩したいな」

 そうつぶやくと、パッロが耳をぴくりと動かして、顔を上げた。

「オレもついていく。リュミひとりじゃ心細いだろ?」

「ありがとう、パッロ」

 玄関の扉をゆっくりと開けると、朝の冷たい空気が、頬を撫でるように通り抜けた。
 パッロは少し前を歩き、リュミの様子を気にしながらも、守るように進んでいく。
 そのうしろ姿がとても頼もしくて、心強い。

「パッロ、あっちに行ってみよう?」

「うん、でも気をつけるんだぞ」

 二人は落ち葉が積もった小道を、カサカサと音を立てながら歩く。
 途中、リュミは地面に落ちていた小さな木の実を見つけて拾い、パッロに見せた。

「見て、パッロ! これ、食べられるかな?」

「ん……大丈夫そうだな。ちょっとだけ味見してみるか?」

「うん!」

 会話を交わすたびに、ふたりの距離が近づいていくのがわかる。
 まだ森は怖いけれど、パッロがいるだけで心強い。そう思えることが、なによりうれしい。

 家のまわりを一周して戻ってくる頃には、額にうっすらと汗がにじんでいた。
 これならよく眠れそうだと、リュミは満足そうに息を吐く。

「ふぅ……やっぱりお外は気持ちいいね」

「ああ。でも、リュミが疲れすぎないようにしよう」