するとパッロが顔を上げ、金色の瞳でリュミを見上げながら、やわらかく声をかけた。

「よかったな、リュミ」

「うん……」

 その一言が、じんと胸の奥にしみる。
 ほんの数日前まで、いつ死んでもおかしくない状況だったのに、今は、あたたかい食事にベッド、頼もしくてやさしいふわふわの存在がいる。

(うん。リュミ、元気わいてきた!)

 スプーンを置き、食器を丁寧に片づけようとしたとき、ふいにエルドがリュミのほうを見た。

「……しっかり食って、眠れ」

「え?」

「それができれば、生き延びられる。他はあとでどうにでもなる」

 言い方はやっぱり冷たい。
 でも、その言葉は、まるでかたい殻の中に隠されたあたたかさを感じる。
 リュミを器をぎゅっと抱きしめるようにして、小さく頷く。

「うん……。ありがとう、エルドさん」

「……ふん」

 それだけ言うと、エルドは椅子を軋ませて立ち上がり、部屋の隅にある棚へ向かった。
 その背中を見送りながら、リュミをそっとため息を吐く。

 エルドの言う通りに寝ようと思ったけれど――たくさん眠ったせいか、体は軽く、目は冴えている。
 疲れたら、眠くなるだろうか。