神官の言葉が、祝福の間の空気を凍りつかせる。
 その静寂の中に、誰かの舌打ちが聞こえたような気がした。

 乏しい。
 それはつまり、役に立たないということ。

「ふわふわって……え? リュミ、ふわふわでなにをするの?」

 質問の答えは、誰にもわからない。
 それでも、みんなの判断は早かった。
 スキルがすべてというこの世界で、未知はすなわち、無価値を意味しているから。

「……まさか、スキルが《ふわふわ》とはな……」

 父が額に手を当てた。
 母の顔は、上品な笑みをたたえているようで、しかしその目はまったく笑っていない。

「混血とはいえ、最低限の実力はあると思っていたのですが……」

 うしろの方で、誰かがそんなことを言った。
 瞬間、空気がざわつく。

「《ふわふわ》だって……!」

「フォルステアの名が泣くわ」

「精神影響系? まさか、敵をくすぐるとか? あっはっは!」

 笑い声が広がっていく。
 貴族たちの嘲りは容赦なかった。美しい空間に、不釣り合いな醜さがこだまする。

 リュミの頭の中が、真っ白になる。
 言葉を探すけれど、声は出ない。唇は震えるだけで、音にはならない。